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第30回 すがり,救われた,忘れじの一冊大岩正芳 著『第2版 初等量子化学』(化学同人)
少々のワケありで今回,はじめてここへ雑文を書くことになった某です.なにぶんにも慣れないことですので,いろいろとアラも目につくことかと思いますが,そこはどうかご容赦を.
さて,「はじめての回」ということになれば,やはりここは「はじめて」つながり.私が学生のときに最初に求めた数学やら化学やらの本を取り上げるのが筋というものですね!
と,思いだしてみると,これはどうやら(株)化学同人の『初等量子化学−その計算と理論−』(1965)という一冊だったような気が.
大岩正芳先生の手になるこの『初等量子化学』は,とにかく記述が「親切」であった.序文によれば,もともと大岩先生ご自身が量子化学を学ぶ過程を記したものがベースになっているとのことで,なるほど,たいていの場合なら「わかりきった」で済まされ,いきなり使いはじめてしまうようなノーテーションだってひとつひとつきちんとコメントされているし,式の導出の過程についてもいっさいが省略されることなく示されている.「鉛筆を持ってたどって行かれるならば,十分に理解していただけるものと思う」という序文の言葉はまやかしではない.もっとも私が,その「理解」にまでいたったかどうかはまた別の話になる.
しかし,そんな大恩ある一冊にも,じつは一点だけ気に入らないところがある.
この本,製本が弱い.
いわゆる上製,ハードカバーなのだが,なぜか読みはじめてすぐ,アッという間に背が割れた.個体差なのかもしれないが,いずれにしろ,いま手許にあるものは「5分冊」である.感心にもスピンまでつけた製本だが,ヘタに利用すると,さらに背割れを増やしてしまいそうなのでビビってしまい,結局は使わずにいる.
現在,この大岩先生のご著書は第2版となっている(1988年刊).ただ寂しいかな.この機会に取り寄せた一冊は並製,いわゆるペーパーバックの姿となり,スピンも省かれていた.
【今回ご紹介した書籍】(書誌情報は1988年4月刊行の第2版) 「裳華房 編集子の“私の本棚”」 Copyright(c) 裳華房,2015 ※「裳華房 編集子の“私の本棚”」は,裳華房のメールマガジン「Shokabo-News」にて連載しています.Webサイトにはメールマガジン配信の約1か月後に掲載します.是非メールマガジンにご登録ください. |
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